大判例

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大阪地方裁判所 昭和44年(わ)1039号・昭44年(わ)776号・昭44年(わ)858号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕被告人鍋島は、昭和二二年九月高知県幡多郡大正町の吏員となり、昭和二五年から収入役、昭和三三年から助役を勤めた後、昭和四一年一月大正町長に就任して町の事務等を管理執行する等の職務に従事し、昭和四二年九月一四日大正町が窪江線建設のため大正町大字田野々地区の土地所有者らとの買収交渉を公団から委任されたことにともない、その頃から昭和四三年三月末頃まで町の事務に属する右委任事務の処理にあたつていたものであるが、

<中略>

第五、被告人河西は、昭和四三年四月上旬頃、高知県幡多郡大正町大字田野々カヂヤシキ二四九の一所在公団大阪支社窪江線鉄道建設所寮において、被告人鍋島に対し、前示大正町、公団間の用地買収に関する委任契約にもとづく町の事務として、被告人鍋島が大正町大字田野々地区内の土地所有者、地上物件者らとの買収、移転の交渉等に従事し、これに尽力したことに対する報酬として、現金三五〇、〇〇〇円を供与し、もつて被告人鍋島の前示職務に関し賄賂を供与し、

第六、被告人鍋島は、第五の日時場所において、前同の趣旨のもとに供与されるものであることの情を知りながら、被告人河西から現金三五〇、〇〇〇円の供与を受け、もつて自己の前示職務に関し賄賂を収受したものである。

(弁護人の主張に対する判断)

被告人鍋島、同河西の各弁護人は、公団、大正町間の契約にもとづく委任事務については、これを町の事務とする法令上の根拠がないので、右事務の処理が町長である被告人鍋島の職務権限に関するものとはいえず、したがつて右事務処理に関して金円が授受されても贈収賄罪は成立しないと主張する。前掲証拠によると、本件契約は窪江線の鉄道用地買収のために、公団が大正町に対して大正町大字田野々地区の土地、地上物件の所有者、利害関係人との交渉、用地取得にともなう登記手続等の事務処理を委任し、その事務費として買収土地代金と地上物件補償金との合計額の三パーセントを支払うという内容のものである。普通地方公共団体が私法上の権利主体となり、私人と同様の収益的行為を行ないうることは疑いのないところであつて、ただその行ないうる収益的行為は無制約のものではなく、地方自治法二条三項一一号が指摘するように公共の福祉を増進するために適当と認められるものでなければならないが、公共の福祉増進に適当という趣旨は収益的行為自体が直接住民の福祉に貢献する場合はもとより、その行為によつて当該地方公共団体の財政を豊かにしその基礎を強固にすることにより結局住民の福祉を増進するのに役立つ場合をも含むものと解すべきである。本件委託事務は、それ自体直接住民の福祉増進を目的とするものとはいえないにしても、用地買収が円滑に進歩することは窪江線の開通を促進し、これが地方産業の振興等に結びつくものであるから、右委託事務を単に営利のみを追求するためのものとみるべきでなく、また公団の申し入れに対し買収対象の土地、地上物件所有者らの希望を徴し、これを尊重することを公団側に承諾させたうえで契約締結に応じていることからみても、公団の利益のためにのみ行なわれたとすることも相当でない。そして右のほか、公団から支払われる委託事務費は一般会計に繰り入れられて町財政の一助となることが契約締結の縁由ともなつていることからすると、本件委託事務は地方自治法二条二項にいう公共事務(同有事務)であると認められ、右事務の処理は町長である被告人鍋島の職務権限に属し、右事務処理に関し金円を授受したことは被告人らの認めるところであるのであるから、贈収賄罪の成立することは明らかであり、各弁護人の主張は採用しない。(児島武雄 金田育三 山田利夫)

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